大動脈の復旧工事2

ビジネス誌「WEDGE」6月号に、たった1ページですが、東北新幹線が4月29日に復旧した事を題材に、興味深い記事が掲載されていましたので紹介します。

タイトルは「過去の震災活かした鉄道員の一体感」
ポイントを下記します。


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【耐震補強対策が有効に寄与】
東北新幹線の開通は震災50日目。山陽新幹線阪神淡路大震災の際の復旧日数はは81日、上越新幹線新潟県中越地震は66日。
その大きな理由は阪神大震災以降の地道な耐震補強施策が有効に寄与したため、致命的なダメージがなかった。


【復旧工事の関係者も被災者】
肉親や親類の連絡がつかない状況の中、復旧工事に携わった。
作業員の宿泊所は20畳しかない粗末なプレハブ。
それでも復旧に協力してくれたのは職人さんの心意気。


【旧国鉄をはじめとする鉄道業界からの熱い支援】
今回の震災で被害が集中したのは電化柱。ハの字形に倒れるなど540か所も被害あり。
電車線*1の復旧は特殊な作業。関係者が調整に心を配った。
国鉄であるJR東海、西日本などからの復旧の支援が大きかった。
特に、JR西日本傘下の鉄道電化工事会社である西日本電気システム㈱は、協力会社含め71名を1カ月に渡り派遣。
西日本電気システム曰く「大勢応援に来てくれた阪神大震災の恩返し」
また、新幹線と同じ1435mm軌間京急西鉄は軌道検測機器をJR東日本に貸し出して協力。
鉄道員の心意気は企業の枠を超えて届けられた。
この一体感が日本の鉄道の安全を形作っていく。



(↑は電車線の一部。加古川線粟生駅にて)


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新幹線復旧の裏には、このように関係者の皆さんの地道な努力があります。
鉄道愛好家は、車両への興味が高い方が多いですが、車両が走る為には、土木・電気・信号・通信・人材などインフラが有機的に一体化されていることにより可能となるものです。
この記事においては、電気分野における復旧工事を題材に記事をまとめられていますが、裏方の分野があってこそ車両が走る事ができる訳です。
鉄道愛好家の皆さんにおいても、車両以外の分野にもぜひ目を向けてもらえたら、と思います。
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また、分割民営化から20年以上経った今で、色濃くも国鉄時代のつながりが残っているのですね。
まさに「国鉄一家」でしょうか。
企業経営という点では国鉄は失敗しましたが、プロフェッショナル集団という点では国鉄は日本最大の組織だった訳で、民営化で人材がバラバラになってしまったものの、いまだに「国鉄」という絆で結ばれているのが素晴らしいな、と感じた次第です。

*1:電化鉄道における、車両に電気を送る設備のこと。架空電車線方式における架空電車線(架線)のほか、地下鉄で用いられる第三軌条などを指す。複々線において列車系統が分離されて使用される特定の複線の事を意味する「電車線」ではないので注意の事。

*2:宮脇俊三氏は鉄道の各分野の方と対談され、本を一冊にまとめておられます。さすがですね。「鉄道に生きる人たち」中央書院刊。現在は絶版?