2012年ダイヤ改正 九州新幹線

2012年3月改正の時刻表が発売されました。
九州新幹線新幹線が全線開業して1年。

1年目は手探り状態でのダイヤだったかと思いますが、1年経過してどのように変更されているのか、時刻表を頼りに調べてみました。
1年前の九州新幹線ダイヤについてのネタはこちら→


(1)スピードアップ
開業1年経過して、路盤が落ち着いたのでしょうか。
新八代駅折り返し時代の、駅南方にあったY字開き分岐器の廃止・線形の直線化もスピードアップに貢献している模様。
各列車とも1〜3分のスピードアップしています。


(2)山陽直通みずほ・さくらの増加
山陽・九州の直通旅客数が予想以上に好調との事で、直通列車を増発。
・みずほ1往復増。
・さくら7往復増。
ただ、増発と言っても、さくらは、別々の列車であったひかり(新大阪−博多)と、さくら(博多−鹿児島中央)を1本の列車として立て替えたものなので、純増という訳ではない模様。
このため、熊本以南が各駅停車タイプのさくらとして設定されています。
また、みずほの増は、山陽九州直通さくらをみずほに立て替え、無くなったさくらは、ひかりと九州島内つばめのスジを立て替えて直通化の上、時隔を調整して設定している模様。
この背景として、新大阪駅のホームを自由に使いにくい制約があるために、なかなか列車の純増とはいかないようです。
また、車両の増備が全線開業時に間に合わなかった面もあるので、JRとしては直通列車増は予定内だったかも?


(3)日中の基本パターンは大きく変わらない。
 (イ)山陽直通さくら(新大阪−鹿児島中央間を速達運転)
 (ロ)九州内さくらA(博多−鹿児島中央。熊本以南各駅停車)
 (ハ)九州内さくらB(博多−熊本)
 (ニ)つばめ(博多−熊本)
 ※(ロ)と(ニ)は、熊本駅で相互に接続。
 ※夕方以降は(ハ)が(ニ)に立て替えられ、(イ)も熊本以南各駅停車に変更。


(4)イレギュラー
新下関発さくら 午前2本(407号、409号)
新下関着つばめ 午前1本(326号)
・小倉着つばめ  午後1本(360号)
・広島発臨時さくら 臨時1本(581号)
いずれも、博多駅に余裕がないために小倉・新下関までスルーさせているのでしょう。


(5)追い越しの事例は前ダイヤと同様に少ない。
追い越しできる駅そのものが少ない事がその要因。
【下り】
 (イ)みずほ601/つばめ333 熊本(緩急接続)
 (ロ)みずほ603/つばめ341 筑後船小屋(通過追い越し)
 (ハ)さくら547/つばめ343 筑後船小屋(通過追い越し)
 (ニ)みずほ605/臨さくら583 新鳥栖(通過追い越し、後者の運転日のみ)
 (ホ)みずほ607/つばめ367 筑後船小屋(通過追い越し)
 (ヘ)みずほ609/つばめ375 筑後船小屋(通過追い越し)
 (ト)さくら561/臨さくら389 新水俣(通過追い越し、後者の運転日のみ)

【上り】
 (チ)みずほ600/つばめ328 新鳥栖(通過追い越し)
 (リ)みずほ602/つばめ334 新鳥栖(通過追い越し)
 (ヌ)さくら546/臨さくら422 新水俣(通過追い越し、後者の運転日のみ)
 (ル)みずほ608/つばめ368 熊本(緩急接続)


この中で驚きだったものが、下りの(ト)。
臨時列車の運転日だけとは言え、新水俣駅での追い越しです。
新水俣は2面3線で、下りが本線1本のみ、上りが本線と、その外側に待避線の合計2本。
上り側の待避線に下りの臨時さくら389号がさくら561号の通過待ちのために入線する事となり、そのためには、一旦上り本線を平面交差で跨ぐことになります。
平面交差で跨ぐ事を交差支障と言い、跨いでいる間、反対側からの列車は足止めを食らい、ダイヤ作成上の大きな制約となるのです。*1
国鉄〜JR(特に国鉄)は、平面交差をいやがる傾向があり、出来る限り平面交差しない配線を設計する方針でした。
分岐駅の場合は、立体交差化*2で、中間駅の場合は使用頻度の高い待避線を上下本線の間に挟む*3ような傾向があります。
ところが、このような設計をする場合、立体交差の建設費が高くなるために、近年では特に交差支障を解消するための立体交差化は避けられる傾向にあるようです。*4
また、上下本線の内側に待避線を設置する場合、駅の前後で上下線がゆるやかにS字カーブとなるので、用地を余裕をもって確保しなければならず*5、コスト低減を考慮すると、それも難しい。
熊本駅以南は列車密度が半減するから、そもそも待避線が必要かどうかも疑わしいぐらいなれど、ダイヤ混乱時を考慮すると、どこかに待避線が1線ぐらいあったほうがいいとの判断もあったのかもしれません。
これらを考慮して、新水俣駅が現在の形状のように設計・建設されたものと思います。


さて、臨時さくら389号は、新水俣駅1833着/1841発。
対向の上り列車である定期さくら570号が新水俣駅を1836に着発しています。
時間がきわめて隣接しており、どちらかが遅れたならば、どちらかの列車が足止めを食らうおそれがあります。
それによるダイヤ乱れがさらに芋づる式に波及していくかもしれません。
このような可能性があるからこそ、国鉄は平面交差を嫌っていた訳です。
もしも、どちらかが遅れている場合、ダイヤ密度が濃い山陽新幹線に直通するさくら570号を優先して通すものと思います。
このいっぽう、筑後船小屋駅も同様の配線*6ですが、新ダイヤの定期列車と春季臨時列車における追い越しの事例は全て下り列車のみ。*7
博多−熊本間の概ね中間にあり、上り列車においてもぜひとも待避線を使用したいところでしょうが、上記の交差支障を考えると、列車密度が熊本以南よりも倍増しているためにそんな曲芸は極めて実施しにくいかと思います。
待避ではないものの平面交差・交差支障の事例として、筑後船小屋駅では深夜の下り最終が当駅終着で、翌朝早朝の上り始発で折り返しとなっており、上り始発列車が下り本線を跨いで出発していくのですが、この時間帯は下り列車の設定がなく、ダイヤ上の不都合はないのでしょう。


とりあえず、思いついた事を上の通り記してみました。
他にも面白い事例があればご紹介したく思います。

*1:東北新幹線福島駅における山形新幹線直通列車が下り待避線の14番線発着に限定され、特に仙台方面からの上り列車が下り本線を跨いで14番線に入線し、出発時も下り本線を跨いで上り本線へ出るために大きなネックとなっている事例あり。

*2:東海道本線湖西線山科駅の分岐や、関西本線伊勢鉄道の河原田駅の分岐はその好例

*3:全国各地に多数ある中線が待避線の2面3線駅がその好例。2面4線でも湖西線近江舞子近江今津のように内側を待避線としている。

*4:それでも、池袋駅埼京線山手貨物線の分岐や、天王寺駅東方の関西本線阪和線の分岐のように、のっぴきならない状況にあれば、やむを得ず新たに設置する例もあり。

*5:新幹線新大阪駅西方にある引上線のさらに西方に、上下線の間に空間があるが、これがその実例。

*6:ただし、待避線は下り側にあり

*7:回送や試運転のスジは不明です。