渡道(4) 12月31日その1 スーパーおおぞら1号で道東へ

札幌のホテルで31日の行程についてどうしようか迷っていました。
実は、帯広−釧路間の乗車体験はあるのですが、日没後の暗い時間だったので車窓は楽しめず、ただ乗っていただけなのです。

(1)今、一部の人にひそかにブームの日本最長普通列車
札幌825(特Sカムイ5)→914滝川937(2429D)→1739釧路
しかし、厚内付近で日没。それ以降景色が見えない。

(2)上よりもやや早い列車で、釧路まで日が暮れない乗り継ぎ
札幌652(特Sカムイ1)→741滝川805(快速3425D)→909富良野920(快速狩勝3427D)→1128帯広1244(2527D)→1603釧路
釧路に明るい内に着くが、上記(1)と比べるとインパクトが弱い

(3)日本最長普通はあきらめ特急で道東へ直行し釧路湿原
札幌703(Sおおぞら1)→1051釧路

悶々と悩んだ結果、せっかくの北海道ですから雄大な自然を楽しみたい!ということで(3)にしました。


そんな訳で朝、ホテルで6時半から急ぎ朝食を摂り、チェックアウト。
6時50分頃、札幌駅の7番ホーム自由席の列に並ぼうとすると驚きました。
すでに長蛇の列です。
10両編成のうち自由席は9・10号車の2両だけ。他の8両は指定席。
増結の場合、指定席車ばかりが増えて自由席車が増えないのは面白くないところです。
10号車の後ろ側の乗車口の列に並びましたが、前側の乗車口にも長い列ができています。
これでは座れるかどうか、まるで自信がない。

しかし、並ばないと座れないかもしれないので、とりあえず並びます。
発車5分ほど前に到着。
扉が開きましたが、列がモソモソとしか動かないのでどうにも気を揉みましたが、ギリギリで何とか座れました。
しかし、座席は10号車通路側の10B。
カーテンを閉められたら車窓を楽しむ事ができません。
結局、座れずにデッキで立っている人もいましたので、止むを得ません。
(幸い、雲が厚く太陽が射さずに釧路まで走りましたので左右ともカーテンを閉められずに済みました)



札幌7時03分発車。
ハイパワーのエンジンが唸り加速します。
しかし、トップスピードにまで加速せずにソコソコの速度で流した走りです。
千歳線内は列車の密度が北海道随一に濃く、Sおおぞら1の前には他の列車が走っているから飛ばせないのでしょう。
結局、流した走行のまま南千歳に到着です。
ここでも自由席には数名の乗車あり。
ここから石勝線に入ります。
道東へはかつて滝川回りだったものを、北海道の屋根こと日高山脈の下をトンネルでぶちぬき新線を作り、劇的にショートカットを達成したのが1981年でした。
南千歳を発車した列車は進路を大きく左に曲げ、ぐいぐいと加速していきます。
とてもディーゼルカーとは思えない豪快な走りっぷりです。
加速の最中、放送で「エゾシカが多数出没する地域を走りますから急停車に注意」との事。
石勝線に限らず北海道の路線は自然豊かな(人跡まれな)地域を通っているゆえの注意事項なのでしょう。
それにしても、トップスピード130km/hから非常制動で停止したら、どのような減速なのでしょう。
そのトップスピードを維持したまま2か所の信号場を豪快に通過しますと、複線のレール(室蘭本線)が右から近づき、立体交差で乗り越えて地平に降りていくと追分駅です。
かつて夕張からの石炭を集積した駅だけあって広々とした構内ですが、現在は石炭列車なぞなく、逆にその広さが益々広く感じられてしまいます。
Sおおぞら1はその広い構内を通過しますが、さすがに駅構内に分岐器が輻輳しているからか、やや減速気味です。


追分を通過すると、旧・夕張線の線路となります。
石勝線の開通とともに改称されました。
追分まではだだっ広い平野を突っ走っていましたが、追分の2駅東の川端からは夕張川の渓谷に沿って走るゆえカーブが多くなります。
しかし、Sおおぞらは振り子式のキハ283系ですから、カーブなどものともせずにぐいぐい突っ走ってます。
川端でキハ40が1両だけの普通と交換、相手を待たせてこちらは高速で通過。
新夕張も通過します。
新夕張は、石勝線の開通までは「紅葉山」といういい駅名だったのですが、なんだか新幹線のような駅名に改称されてしまいました。
新夕張で夕張支線が左に分岐しています。
かつての夕張炭鉱や三菱の大夕張炭鉱からの運炭路線でしたが、閉山した今は地元密着路線として細々と運行されています。
夕張支線は8年前に終点の夕張まで乗車しましたが、今回はパスです。


新夕張の次が楓信号場。
駅周囲に集落があるために2003年までは駅でしたが、集落の子供の列車通学がなくなり、駅から信号場に格下げされた歴史があります。
もともとは紅葉山−楓−登川という炭鉱に向かう支線があったのですが、石勝線の開業とともに支線は廃止され、旧・楓と旧・登川の間に新・楓駅が設置されました。
そのような流転の歴史を持つ楓は、旅客扱いこそなくなりましたが、現在も信号場として重要な役割を果たしているのです。
楓信号場を過ぎると、いよいよ山に挑みトンネルに突っ込みます。
この先、長いトンネルがいくつもあり、トンネルとトンネルの間にあるわずかな明かり区間に交換のための信号場が設置されています。
そのうちの東オサワ信号場でSとかち2と交換。
ここでは相手を待たせていたのですが、こちらもなぜか停車しました。


この先も北海道の屋根の下を延々と突っ走り、やっと停車駅であるトマム駅に停車しました。
周囲に集落が見えます。
しかし下車したのはわずか2〜3人だったようです。
トマムを発車すると上落合信号場で根室本線と合流します。
しかし、新狩勝トンネルの中で合流しますので、景色はよく見えません。
トンネルを抜けると、日本三大車窓のうちのひとつ、狩勝峠の斜面から十勝平野が望めます。
何度か通っていますがいつも冬で景色が白一色のモノトーンなんですよ。
初夏にでもここを通れば緑が色鮮やかでなお良い景色に見えるでしょうか。

(写真では雄大さがイマイチですが、自分の目で見れば本当に雄大です)


この先、新得、帯広、池田と十勝平野のだだっ広いエリアを走ります。
芽室付近には製糖工場があり、工場の煙突がモクモクと湯気を上げています。
年末年始でも工場は稼働しているのでしょうか。

帯広ではまとまった下車がありました。
だけど、自由席は不思議と空席がありませんね。
池田では車窓左側にワイン城と観覧車がやたら目立ちます。
どうにも個人的な所管としては、こんな自然豊かな場所に観覧車は不要なんじゃ…
かつて池田からは北海道ちほく高原鉄道が分岐していました。
車窓から見ても、もう今はその痕跡は見えません。
痕跡は残っているのかもしれませんが雪に埋もれています。
生きている線路ならばレールに轍が見えるのですが…
寂しいですね。

(↑2005年3月 北海道ちほく高原鉄道 陸別駅にて)


池田から線路が南東に向かうと厚別付近で太平洋に出会います。
この日は折からの低気圧の影響で海は大荒れ、大きな波が浜を洗っていました。

この厚内〜尺別〜音別付近は、海をバックにS字カーブを曲がる列車を撮影可能な、鉄道写真の撮影ポイントとしてもよく有名ですね。


10時51分、釧路に到着。
3時間48分の所要時間でしたが、車窓が良くて不思議なぐらいに退屈しない車内でした。
釧路では驚くほどたくさんの乗客が降りたようで、改札口が渋滞しています。
札幌から乗り通した人が多いのでしょうね。

【以下続く】