近鉄 2012年ダイヤ改正に思う

近鉄より2012年3月改正のダイヤ概要が発表されました。


バブル景気後の1991年以降、続いていた旅客減に対応すべく、抜本的に見直し、トータルで見ると、現ダイヤと比較して4.8%の本数減との事。
日経の記事によると、1991年の利用客が8.6億人だったものに対し、2010年は5.7億人との事。
団塊の世代の引退、都心回帰傾向、少子化が進展しているとはいえ、ここまで減っている事に驚きを隠せません。実に33%減です。


私は通勤通学で20年以上、近鉄南大阪線を利用しています。
大学通学で利用していた1990年代中盤、朝ラッシュ時のあべの橋行き急行はギュウギュウ詰めだった事を覚えています。
当時は、混雑率の緩和のために輸送力増強が進められていました。
確か1993年頃の改正だったと思いますが、古市駅のホームが7両分から8両分に延伸され、それまで6両*1で走っていた吉野発の急行が古市で2両増結され8両運転されるようになり、混雑が緩和されて楽になったことを覚えています。
輸送力増強が完了した以降も旅客数がそのままならばともかく、20年で約3分の2にまで減ったのですから、せっかくの輸送力増強も割に合わない投資だったことでしょう。
その後も通勤で南大阪線を毎日利用していますが、近年は確かに昔ほどの混雑ではないな、と感じています。
朝ラッシュ時は、上記のようにギュウギュウではないものの、まだ混雑しているほうだとは思いますが、夕ラッシュ時はだいぶ楽だな、と。


今後も人口減が続くような状況ですから、旅客数減も当然予想できるでしょう。
それを見越してダイヤを作成しているものと思います。
状況によってはさらに1年後に修正されるでしょう。
企業として、何よりも従業員を食わしていかなければならない事、そして株主への安定配当も必要、等々を考えると、スクラップ&ビルドは止むを得ない話だとも思いますが、往年の混雑・輸送力増強を体験しているだけに「寂しいな」と思わずにいられません。


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さて、以下にプレス発表の中から思う事を、私個人の独断と偏見でピックアップしてみようと思います。

1.「ノンストップ」風前の灯?
ノンストップと言えば、かなーり昔、関西ローカルで「ノンストップゲーム」というクイズ番組があったなぁ・・・
そんな中年のたわごとはさておき、名阪甲特急の全列車が津に停車する事になりました。
かつて、関西私鉄には各地にノンストップ(と謳っているかどうかは別として停車駅が極めて少ない優等列車)が設定されていましたが、阪急京都線特急・京阪本線特急がその看板を返上し、東海道山陽本線新快速はノンストップとは言ってなかったように思いますが、京都−大阪−三宮間を大阪以外無停車だったものが今やあれほどに停車しています。
南海ラピートαもかつてはノンストップだったものが、今や停車駅が増えてしまいました。

そんな中、最後の砦が近鉄で、そのうち名阪甲特急ことアーバンライナーが、とうとうノンストップを返上することになりそうです。*2
旅客数減少で、ノンストップでは採算が厳しくなってきたのでしょうか。
それでも、三重県県都ですから、看板列車の停車駅としては上々だと思います。
だけど、近鉄のメンツにかけてでもノンストップの看板は維持してほしかったなぁ。
こうなると、土・休日ダイヤの阪伊甲特急でかろうじて設定されているノンストップ1.5往復が生き残るかどうかですが、今回のプレス発表ではその旨が書かれていないところを見ると、近鉄から「ノンストップ」は全滅は免れそうです。


2.データイムの京橿特急と京奈特急を併結運転
多数の列車が輻輳して、とても忙しい西大寺駅で連結解放作業を実施するのですね。
京都線は最大6両なので、どちらかの系統はたったの2両運転となりますね。
あと、先頭部の行き先表示幕を新設?

↑のような2段表記の表示になるのでしょうか。


3.大阪線にも区間準急がデータイムに新設
通過運転は八尾まで。以東は各駅に停車。
という事は、これに対応して、データイムの上本町−国分の普通も高安発着に短縮されるのでしょう。
大阪線の準急は、待避線のある駅ではよく追い抜かれますので、普通と所要時間があまり変わらないような列車も多い。
準急というよりは「停まらない駅のある普通」とでも言ってもいいんじゃないかと思えるぐらい。
コストも見直さなければいけないし、だったら高安−国分間を停めてしまえ、となったのでしょう。


4.大阪線快速急行区間快速急行快速急行に一本化。
ついに「区間快速急行」なんて変テコな名称の種別も廃止なんですね。

快速急行が通過していた室生口大野と赤目口に停車させ、その代わりに快急・区快が停車していた伊賀上津、西青山、東青山を通過に変更。
青山町以西だけで見れば快急の区快化です。
まぁ、現行の快急と区快の違いが曖昧なんだから、仕方ないでしょう。
青山町以東の停車駅の通過に変更は予想外でした。
もっとも、そうでもしないと、快急と急行の差別化*3が図れませんよね。

これは以前から個人的に思っているんですが、三本松のホームを10両対応に延伸して区快を停めれば、準急名張発着を榛原発着に短縮できるのです。
それで車両キロを抑えられるのになぁ、と思うのですが、それをやらないのは、名張車庫、青山町車庫への入出庫が絡むからでしょうか。


5.名古屋線に名古屋−四日市の急行を設定
朝と深夜に上下1本ずつしか設定されていなかったものが、データイムに一挙に12本も新設。
四日市工業都市だけあって、パイも大きそうだとは思いますが、それほどまでに流動が多いのでしょうか。
それとも、JR関西本線との競争でしょうか?


6.南大阪線夕ラッシュ時の急行古市−橿原神宮前系統を削減
おそらく、大半の方は注目度が低いのではないかと思うのですが、私としては、他の何よりもこれが非常に痛い。
7本減とあるから、おそらくこの系統は全滅でしょう。
勤務が終わって帰宅の際に、よく使っている系統なのです。*4
あべの橋を毎時20分・50分発の急行吉野行きに乗れればいいのですが、乗換えのタイミングがギリギリなのですよ。
その10分後に設定の、あべの橋を毎時0分・30分に発車する急行河内長野行きに乗ると、古市で急行橿原神宮前行きに接続しています。
これは空いているので座りやすく、帰宅の足にもタイミングがよいので私としては大変都合良い列車なのです。
ところが、この系統は座りやすい列車ですから、近鉄としては有難くない列車なのでしょう。
なぜ空いているのか。
この系統のダイヤの構成が悪いのです。
 a)あべの橋を、吉野行き急行が発車した10分後に、橿原行き急行に連絡する河内長野行き急行が発車なので、どうしても先発の吉野行きに旅客は集中します。
  その逆ならばよいのですが、今の南大阪線ダイヤパターンでは、吉野行き急行が終点吉野まで特急から逃げ切るダイヤとなっており、順序を逆にすると、逃げ切れなくなってしまうため、それができない。
 b)さらに、あべの発でない。
  厳密に言うとあべの発なのですが、あべの発車の段階では古市行き準急で、古市に着いたら車両はそのままで行き先だけ橿原神宮前行き急行に変更するのです。
  利用客からすると、わかりにくいし、気付いていない・知らない人もたくさんいると思います。
  急行河内長野行きと接続している旨も一応は案内されていますが、これまた分かりにくい。
  ゆえにこの系統に旅客を誘導しきれていない。
 c)なおかつ、尺土で御所行きには連絡していますが、橿原神宮前行き普通に接続していない。
  浮孔・坊城・橿原神宮西口の旅客は、この急行を使いたくても使えないのです。
  できれば、急行でなく区間急行として運転すべきなのでしょう。
  しかし、尺土−橿原神宮前間で後続の特急に追いかけられるため、区間急行にもしにくい。
利用が奮わないから廃止という事ですが、乗客を誘導するような工夫をしないまま廃止ですから、日常的にこの系統を使っている一旅客としては非常に納得しにくい話であり、かつ極めて残念でなりません。
もうほんとにね、編成両数が2両でもよいから、間引くのだけはやめてほしい限りです。


7.京都線は本数減?
 ・上記2で紹介したように特急の連結運転で、京都−西大寺間の特急が12本削減。
 ・データイムの京都−天理の急行を本数減。
 ・京都地下鉄に直通の急行も削減。
 ・そして京都−橿原神宮前西大寺では?)間普通を京都−新田辺に変更。
このように、削減ネタばかり。
京都線のダイヤはキレイな15分サイクルのダイヤ(厳密に言うと地下鉄直通があるので30分サイクル)なのですが、特急や急行が間引かれるようにも読み取れます。

JR奈良線との競争があるので、特急はともかく、急行や普通の間引きは考えにくいので、運転区間の短縮、系統変更の対応となると思いたいところなのですが・・・


以上の通りピックアップしてみました。
詳細は、2月中旬の、時刻表の発売を待ちたいと思います。

*1:吉野→橿原神宮前4両、吉野→あべの6両

*2:現行ダイヤでも朝夕に八木や津に停車の甲特急がありますが、これはノンストップを謳わずに走っています。

*3:他には布施と河内国分の停通

*4:この系統は尺土駅が2面3線から2面4線へと改良された際に設定されました。確か1993年頃だったかと。