近鉄が次世代「新型観光特急」を開発

すでにご存じの方も多いかと思いますが、近鉄が表題にある通り新型特急車両を平成25年にデビューさせるとプレス発表されました。
このプレス発表を読むと、これまでの近鉄特急の常識からすると、かなり飛躍した車両を作るようです。
とりあえず、思いつく事を以下に記してみたいと思います。


(1)座席は全て3列シート*1
(2)シートピッチは125cm。*2
開放室の座席は、JRのグリーン車と同等の座席*3となる模様。


(3)先頭車は大きなガラスで見晴らしのよいハイデッカー車。
他の鉄道でも「ゆふいんの森」「スーパービュー踊り子」などがそのような車両なので、特に目新しいものではなく、近鉄でも団体専用車「楽」は流線型ではないですが展望席ですね。
さくらライナーの展望席がリニューアルで無くなったのは、展望車のコンセプトは新型に採用したかったのか、とうがった見方も。


(4)グループ客のための個室・グループ席を設置。
ビスタEXの階下席をグループ専用席にしたのは、新型車のための布石か。
グループ席は、伊勢志摩ライナーのサロンカーに2人席と4人席が既にあり同様のコンセプトのようですが、新型車には6人席となっています。
6人では人数が多すぎて、売りにくい&買いにくいのではないかな。


(5)カフェテリア車両は2階建て
2階がカフェテリアスペース、1階はグループ専用席兼多目的スペースとの事。
新型特急車の構想が新聞報道された時には「食堂車の構想あり」との事でしたが*4、さすがに「食堂車」はハードルが高かったのでしょう。
調理を行なうとなると、当局に対して免許や届け出の問題が出てくるのだと思います。
イメージとしては調理済みの弁当、軽食、飲料をカウンターで販売して、カフェテリアのテーブルで食べる形になるのでしょう。
新幹線100系のカフェテリアは、飲食のための座席はなく、自席に戻って食べる形態でした。
近鉄の12000系、18400系にかつて設置されていたスナックコーナーも同様でした。
今回のカフェテリアは、イメージ的には、かつての787系つばめのビュッフェ(腰かけあり)、ゆふいん森のビュッフェ(腰かけなし。立食形式)のような感じでしょうか。


(6)販売メニュー
カレー・パスタなどの軽食などに加え、当列車限定の有名割烹による特製弁当。
飲み物はビール、日本酒、ワイン、ジュースなど。
デザートは車内限定スイーツ。
→どうにもかなり思い切ったサービスを考えているようです。*5


(7)新造数は6両×2編成で12両。
投資総額は37億円で、1両あたり3億円強もするのですね。
規格の決まった車両を量産するのではないですから、コストが高くなるのは止むを得ないところか。


(8)運行区間:大阪〜伊勢志摩、名古屋〜伊勢志摩を各1編成ずつで運行。
2編成新造で、運行も2編成だと、予備車がないため毎日運転は難しい模様。
カシオペアのように運転日を限定か、もしくは、ゆふいんの森のように検査入場中は他車両使用の同ダイヤ運行ということでしょうか。
とりあえず、収益がさほど見込めないであろう車両になりますから*6、必要最低限の車両数だけ揃えてスタートし、当分様子を見るということでしょう。
運行ダイヤは、1編成が大阪・名古屋〜伊勢志摩を2往復させたいところでしょうね。
集客に都合の良い時間帯に2往復させるとなると、ダイヤ的には甲特急のスジか?
まさかとは思いますが、トワイライトEXPやカシオペアのように、希少価値をもたせるために敢えて1往復?


(9)料金は、一般特急料金の他に「新型観光車両料金(仮称)」を徴収予定。
編成定員が147人で汎用特急車の半分しかありませんから*7、ワンランク上の料金設定をしなければならないでしょう。
3列座席はデラックス料金(定員が少なく快適性が高いから更に高いかも?)、個室やグループ席はそれに応じた料金でしょうか。
かと言って、あまり高くしすぎると乗ってもらえないので、あとは地道に宣伝をして集客するしかないでしょう。


プレス発表を読めば読むほど、これまでの近鉄カラーにはない車両のようです。
近鉄の特急車にしては珍しく、ビジネス利用は一切考慮されてなさそうな様子です。
伊勢志摩ライナーでも6両編成中4両は汎用的な車両ですし、一時は名阪特急に運用されたり、間合いで阪奈、京橿で運用されたりもありましたから、今回発表の新型車のゴージャスぶりがうかがえますね。*8
今回発表の新型特急車は、JRで言うところのカシオペアやトワイライトEXP、もしくはジョイフルトレインといった位置づけ…、要するに観光の目玉列車、でしょうか。

*1:従来車のレギュラーシートは4列

*2:従来車のデラックスのピッチは105cm

*3:JRのグリーンでも3列があれば4列もありますが、どちらと同等かは言わずもがな。

*4:何を時代錯誤な事を言ってんだ?と思いつつも、私が幼少の頃に鉄道知識を刷り込まれた時代はかなり下火だったとは言え、食堂車がまだ各地を走り回っていた(新幹線、東北線北陸線、北海道など)ので、ちょっとだけ期待していました

*5:こういったコンセプトは、デビュー当初は頑張ってサービス提供されるのですが、手間や利用状況により徐々に下火になる傾向があります。さて新型特急はどうなりますやら?

*6:収益の追及だけならば満員の通勤電車を運転しているほうが効果的

*7:汎用特急車ならば6両で300人程度

*8:汎用的な車両があるからこそ間合い運用もできるのです。寝台特急は、特殊な車両ゆえに、ヒルネはあっても間合い運用はできません。