特急北近畿②

さて、特急北近畿が来春に新車導入および改名される訳ですが、北近畿号について少々。

北近畿号は、昭和61年の福知山線宝塚〜山陰本線城崎の間が直流電化された際に誕生しました。
その前身はディーゼル特急まつかぜや急行だいせんでした。
せっかくの電化ですので本来ならば、新車を投入したかったところなのですが、その当時の国鉄財政は破綻しており、とても新車を投入できる状況ではなかったので、各地からの中古車をかき集めて電車を揃えた訳です。
この中古車というのが、「交直両用」特急電車の485系だったのです。
今回の新規電化区間は全て直流。
交流電化はありません。
本来ならば、直流専用電車を準備したかったところ、新幹線の開業などで全国各地で余剰気味となっていた485系に白羽の矢が立てられて間に合わせたのです。
せっかくの交流区間も走行できるそれ用の機器は宝の持ち腐れとなりました。
しかし利用客からすれば、交流も直流も関係ない話ですので、とにかく、格好だけは何とかつけて新規電化開業を飾る目玉列車となった訳です。

当初は485系で運行されていたのですが、11月13日のブログにも書いたように、七尾線用の交直両用電車が必要となったが故に、北近畿485系の交流用機器を取り外して113系に取り付け415系化というウルトラCをJR西日本さんはやってくれました。
それ以来、当エリアの特急車両は「183系」という名称に変更されることになりました。
これは勿論、最初から183系として新造された車両とは全く関係がありません。

(↑改造183系です。すなわち元485系で、しかも中間車に運転台を取り付けた改造車)

(↑本家本元の正統183系)


その後、山陰本線京都〜福知山も電化され、京都発のディーゼル特急・急行もほとんどが電車特急化されることになりました。
ここでも485系を転用で対応(これまた都合のいい事に、北陸本線の特急に新車が投入されて485系が余剰となったのです)となり、大阪・京都〜城崎の特急は他線のお古で賄われる事になりました。
そして、その後は運転本数や区間の増減や、「ビッグXネットワーク」と呼ばれる福知山駅での接続を考慮した接続体系になり、現在に至る訳です。

このように、何かと話題だけは豊富な北近畿号ですが、意外と乗る機会がなく、はじめての乗車は2005年の1月に城崎に松葉カニを食べに行った時に往復で乗車することになりました。
http://www.jr-odekake.net/plan/kanikani/
↑で手配しましたので、往復とも北近畿号でした。
親孝行も兼ね、奮発して「極みコース」の往復ともグリーン車利用となりました。

この時の感想として、
(1)特急なのに遅い!
(2)グリーン車なのにどうも不満のある座席。
でした。
まず(1)は、福知山線山陰本線も、太平洋側と日本海側の分水嶺を越える路線です。
そして建設された年代がかなり古く、極力地形に逆らわないで線路が敷設されています。
なので曲線も結構多い。
実は、城崎まで電化する際に北近畿号の車両をどうするか議論されたそうです。
曲線だらけの路線を走る路線なので、振り子式の381系を導入すればどうか、と。
しかし、上記にもあるように赤字で財政破綻国鉄にそんな資金はありませんので、仕方なく振り子式でない他線のお古たる485系が転用されました。
はっきり言いますと、カーブでの走行速度は電化前も電化後も変化がない訳で、変わった点といえば、加減速がよくなった点と、当時の非力なディーゼル車だと勾配で速度が低下していたところ、強力な電車なので速度低下がなくなった、という点ぐらいです。
なので、電車化といえど、さほどのスピードアップはしていないのです。
スピードアップのためにはカーブを改良するぐらいしかなく、福知山線の宝塚〜三田間の複線化に伴う線路の付け替えがあった外には改良がなされていないのです。
ですから、北近畿号に乗っていても、篠山口以北はスピード感に乏しいのですよ。
車両的には時速120キロまで出せるのですが、せいぜい時速100キロ以下な走りっぷりでした。
この点が北近畿号のウィークポイントで、新車が導入される際には振子式電車を投入したらいいな、と期待していたのですが、JR西のプレス発表を見ると振子式電車ではなかったので少しガッカリしました。


(2)について、まず往路(大阪→城崎)
1両がグリーン車と普通車でそれぞれ半々の合造車でした。
車内に入るとグリーン車なのに2人+2人シートとなっていたのです。
グリーンは半車しかないので定員確保の観点もあったのでしょう。
国鉄時代はグリーンでも2+2が当たり前でしたが、近頃の特急は、普通車でもリクライニングが当たり前になり、前の座席との間隔もそれまでよりもやや広めになりつつありました。
普通車の質的改善が進んでいる以上、グリーン車を改善せずにそのままでは両者の境界が曖昧になりグリーン車としての存在感や価値観が揺らいでしまいます。
なので、グリーンの場合2+1とし座席幅をゆったりとさせた改善されつつある流れだったので、北近畿も当然そうだろうと思っていたら2+2だったのでがっかりしました。

(↑北近畿ではありませんが、2+2のグリーン車のイメージということでキロハ28の画像です)


ところがですね、復路(城崎→大阪)のグリーン車
こちらはJRカラーの車両で1両がまるまるグリーン車です。

(↑この車両に乗りました。一見するとグリーン車に見えません)
車内に入って驚きました。往路とは異なり2+1なのです。
同じ名称の特急で、同じグリーン料金なのに、まるで雰囲気が異なります。
これは如何なものか。
しかし指定された座席が2+1の1人側だったので、これは少し嬉しい。
このように複雑な思いを抱いて座席に座りました。

ところがですね、座ったらまたもや違和感があります。
グリーン車には必ず設置されているはずのフットレストが見当たらないのです。
普通列車用のグリーン車ならフットレストがないのは知っていましたが、北近畿号は特急です。
よく見ると、イスの台座の下部に、ここに足を乗せろとばかりに、金属の棒が横に通してあります。
なんだこりゃ…、と失望しました。
このグリーン車も改造車です。
普通車からグリーン車に改造された車両なので、窓と座席の位置が一致していない席があり、おそらく、室内の長手方向の寸法が、グリーン席を規定の寸法通り(ピッチ1160ミリ)に設置したならば微妙に合わないのでしょう。
そこでピッチを詰めてイスを配置し、そうするとフットレスト設置だと足元が狭くなるのでさては省略したのではなかろうか?と勘繰っています。

(↑特急・急行グリーン車の象徴ことフットレストです。これもキロハ28)

かくのごとく、北近畿号のグリーン車は何かと不満な思いでしか残っていません。
来春投入される新車はきっとマトモなグリーン車となっているでしょう。