くろしおにも新車なのですが…

いやぁ、驚きました。
紀勢本線の特急くろしおにも新車287系を投入のこと。
(↓のプレスリリースの下のほうを参照)
http://www.westjr.co.jp/news/newslist/article/1175072_799.html

くろしおの381系って昭和53年の紀勢西線電化時に投入されています。
よく考えたらもう30年以上になるんですよね。
そりゃ新車に置き換えの話が出てきてもおかしくありません。

何と言ってもですね、381系といえば、海岸線に沿って敷設されているカーブだらけの紀勢本線を大幅にスピードアップさせた立役者です。
高速化といえば、カーブの少ない線路を造る事が何よりもの特効薬なのですが(→新幹線がその最たる例)、金もなく技術も未熟だった時代に敷設された路線はどうしても地形に悩まされてカーブが多くなっています。
そんな路線に投入された振り子式の381系は、線形の悪いでも高速化できるという例を実証したエポックメイキングな車両でもありました。

そんな車両も上記のとおり、デビューから30年。
置き換えが発表なされた訳ですが、プレスリリースを見て「?」と疑問だらけなのです。
上記のリンクにあるJRの発表によると、形式名が「287系」とあります。
はて…、287系といえば…。
そう、先日のブログにも書きました通り、北近畿号(こうのとり号に改称)に投入される予定の新車と同じ形式なのです。

現在の北近畿号は485系から改造の183系。
非振り子車です。
これが新車287系に置き換えということは、新車も非振り子車と考えるのが妥当でしょう。
再掲になりますが、福知山線篠山口以北〜山陰本線も建設年次が古くカーブが多い区間です。
ここに381系を投入していたら大幅時間短縮も見込めたのですが、そうはならなかった。
しかし、北近畿号の沿線にも高速道路が着々と延伸されてきています。
国の政策で、ETC装備車の高速道路通行料均一1000円や、無料開放の区間までもが設定されていて、鉄道ばなれが起きています。
現実に京都北部の高速道路は無料区間となっており、北近畿タンゴ鉄道が大幅な乗客減で困っているようです。
そんな背景や環境のもと、鉄道の競争力維持のために、もしかすると287系が振り子車(または車体傾斜装置の装備車【注】)ということも有り得ないでもありません。
しかし、そうであるならば「こうのとり号」の発表の時に、『振り子車導入で時間短縮を図ります』などと発表されてもおかしくないのですが、そのような事は一言も触れられていません。
だとすると非振り子車かな、と思うのが妥当なところ。

そこに、今回のくろしお号新車置き換え発表がなされました。
現在の紀勢西線の特急は全て振子り車(381系と283系)であり、このほど置き換えられる事になった287系が非振り子車だったとすると、カーブの通過速度が落ちてしまい始発駅から終着駅までの所要時間が延びてしまう事になります。

紀勢西線沿線においても、高速道路が延伸されてきており、現在のところ紀伊田辺まで開通しており、さらに2015年頃には周参見まで延伸される予定です。
しかも、和歌山市以南の高速道路は片側1車線のために行楽期などに渋滞、ひどい時には停滞を招いていたのですが、着々と2車線化の工事が進行しており、2車線化が完成したならば走りやすくなり、ますます高速道路の競争力がアップするものと予想されます。

JRの商売敵が着々とレベルアップしているのだから、くろしおの新車も振り子式を投入すべきなのですが、どうも振り子式ではなさそうな様子。
競争力アップどころか、競争力ダウンです。
もしくは、直線区間での最高速度をアップや加速力の向上で381系と同等の所要時間で走れるように狙うということも考えられないでもありませんが、紀勢西線はカーブが多いので、それにも限界があると思います。

もっともJRの発表には、こうのとりの時もくろしおの時も、「振り子式である」とも「振り子式ではない」とも触れられていませんから、もしかすると、振り子式の可能性があり得ないでもないのでもないですが、期待薄かと…

とにかく、私の予想が外れる事を切に願うところです。

(↑これも振り子車の283系。381系よりも新しく高性能。紀勢西線でこの車両を使った特急はくろしお号でなくオーシャンアロー号と名乗っています)

【注】車体傾斜装置とは
振子式だと台車にコロが装備されて形状が複雑で高価なので、振子式でない通常の台車の空気ばねの片側だけに空気を入れて車体を傾ける装置。
振り子式ほどではないが車体を傾ける事ができるので、それなりにカーブの通過速度を高められる。
新幹線N700系名鉄の空港用特急車、北海道の特急車キハ261系などに装備。