指宿のたまて箱

略称は「いぶたま」

なんだこりゃ…?
と思ったら、九州新幹線の全通とあわせて、指宿枕崎線鹿児島中央〜指宿)に導入される特急列車だそうです。
http://www13.jrkyushu.co.jp/newsreleaseweb.nsf/9dd28b8cb8f46cee49256a7d0030d2e6/fe104fbdc8762311492577c20057fb7f?OpenDocument

なんでも、薩摩半島の南側一帯に浦島太郎伝説が残っているので、これが列車名の由来とのこと。(浦島太郎伝説が鹿児島だったなんてちっとも知らなかった)

これまで同線には快速いぶすきDX号という列車がありましたが、これの発展形となるようですね。
で、車両をどうするのかと思えば、これまでのキハ200を改装でもして使用するのかと思えば、なん古いとキハ47を大きく改装することで対応となるようです。
(↓右側の黄色がいぶすきDX号、左側がキハ47)

数年前にデビューした「はやとの風」と同じやり方ですね。
万が一利用客が伸びずに失敗しても、お古の改造だったら損失も大きくないという打算があるものと思います。
まぁ、種別は特急といっても「特別に急いで行く列車」ではなく、観光用のジョイフルトレインといった性格なのでしょうね。
(このタイプの改造車は、傾向として東日本・西日本は快速扱いで、北海道・九州は優等列車となる例が多いようです)

運行区間は新幹線の終点である鹿児島中央から指宿までとの事。
この運行区間だと、その東側が錦江湾で、桜島も見える区間なのですが、薩摩半島の名物である開聞岳は見えませんし、JR日本最南端の西大山駅まで到達しません。

車窓的には、開聞岳も捨てがたく、指宿〜枕崎間のあまり開発されていない付近を淡々と走りながら見える南九州特有の濃い緑の向こうの太平洋なんかもなかなかいい雰囲気だと思うんですが。
考えるに、車両は必要最低限だけ用意して(毎日運転で2両編成なので、おそらく予備を含めて3両を用意)、しかも薩摩半島の一大観光地である砂風呂で有名な指宿温泉へのアクセスを最大限に考えた結果、指宿までの運転となったのでしょう。
いやはや何にせよ、JR九州さんは面白い列車を色々と産み出してくれます。
どうにも我が地元のJ西さんは、持てる経営資源を新幹線と関西のアーバンネットワークに集中投入しており、このようなローカル線振興に対しては消極的に見えますから、いまいち面白くありません。
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さて、「いぶたま」用車両の元の生い立ちは普通列車用として造られたキハ40系列で、これを特急として走らせるのは如何なものか?という議論は国鉄時代における急行運用への充当の時からあった話です。
最近だと、北海道の急行利尻の車種変更時(客車→気動車キハ40)、津山線の急行つやまの車種変更(キハ58→キハ48)、九州のはやとの風デビューの際にも論じられました。
特に北海道の辺境を走るような急行だと、かつては1両単行の急行があり、単行で運用できる急行用の専用車両がなかったので、やむなく単行で走る事のできるキハ22やキハ40を使用していました。(その後キハ53系500番台という急行車両が改造で造られましたが、ここでは割愛)
JR九州のプレス発表にあった車両デザインのイラストを見ますと、海側と山側で異なるカラー、車内は二人掛けクロスシートやソファーのようなシートも設置、奇抜でなかなか興味をひくデザインのようです。
元の種車セミクロスシートロングシートボックスシートの折衷タイプ)のキハ47だったのですが、ここまで大きく手が加えられると実質的に新車のようです。
国鉄末期の北海道辺境の急行や、津山線の急行つやまは、普通列車用の内装で急行列車として運行したために「遜色急行」や「料金ボッタクリ列車」などと悪評さんざんでした。
このような過去もあり、キハ40系列を優等列車に使用する事は、保守的傾向の強い一部の鉄道マニアからすると、見るに堪えないゲテモノ扱いされています。
(↓ ゲテモノ?)

しかし私は、今回の「指宿のたまて箱」や以前にデビューの「はやとの風」・「海幸山幸」は大きくグレードアップさせていますので、JR九州の地域事情や台所事情からすると、新幹線開通とリンクさせてなかなか面白いものを造るんだなと評価しています。


まあ要するに、資本集約産業たる鉄道は固定費が高く(=損益分岐点も高くなる)、少しでも利用客を増やさない事には利益が出ませんから、集客努力を肯定的にとらえている、ということです。
鉄道マニアのいけないところ(自分も含む)は、地域事情や台所事情など、その路線をとりまく事情を考えないで「廃止するな」「新車を入れろ」「スピードアップせよ」だの理想論ばかり語るところ。
意見の対象の路線を日常的に利用しているのならまだしも、普段利用しない人間が色々と言うのは如何なものか。
鉄道が好きなら、せめて訪問時にでも対象路線を利用して廃止にならないようおカネを落としましょう。
これが部外者ができるせめてもの協力です。
あと、その鉄道会社の株式を購入するという手も。