五新線→阪本線→奈良交通五條西吉野線

タイトルをどう書いていいのか悩んだので、全て書いてしまいました。
無機的に言いますと、奈良交通バスの専用道経由「五條西吉野線」に乗車してきました。


これだけではよくわからない方もいらっしゃるかと思いますので、もう少しだけ詳しく記しますと…。
五新線:和歌山線五条駅*1紀勢本線新宮駅とを連絡するはずたった国鉄の建設予定鉄道路線*2
阪本線:五新線のうち、五條側の完成した路盤をとりあえず流用して国鉄〜JRが営業したバス路線。*3
奈良交通五條西吉野線:JRバスが撤退したあと、地元自治体の要請で奈良交通が引き継いだバス路線。


将来は鉄道として走るはずだったこの路線。
鉄分過多な私からすると、大変興味深い。
なんとなくズルズルとほったらかし&先送りしていました。
しかし当路線は、平日ダイヤで5往復、土休日ダイヤに至っては朝の1往復だけしかなく、年々本数が減ってきている様子。
今のうちに体験乗車しておかないと、乗車できないままに廃止となりかねません。
平日ならば15時台に設定があり無理なく乗車できそうなのですが、サラリーマン的にはなかなか難しいため断念。
ダイヤを調べたところ、我が家からならば土曜休日の貴重な1往復に間に合う事が判明したため、眠いところを早起きをしてこのほど乗車してきました。


【土休日のバスのダイヤ】
 往路:五條駅652→専用道城戸721頃
 復路:専用道城戸724→五條駅752


往路の652発に間に合うようにJR和歌山線に乗車し五条644着。
その時点では、駅前のバス停にまだバスは来ていません。*4
ほどなくしてバスがやってきました。定刻。

乗客は私だけ。
そりゃそうでしょう。こんな時間の下り便なんて実質的に回送なんだから。


しばらくの間は一般道を走行し、県立五條病院バス停を過ぎると専用道に入りました。

専用道に入ると、道幅はバス1台分の幅ありません。
そして、山間の一般道ではあまり見られない緩いカーブと緩い勾配。

そして切り通しも。

さらにはトンネルも。
道路用のトンネルではまずありえない馬蹄形の開口部。


まぎれもなく鉄道路線の規格ですね。
鉄道路線で新線区間に乗ると、体がゾクゾクするのですが、当路線でもゾクっときました。
バスの中から前方を見ていると、本当に鉄道の雰囲気が充満していましたから。


上柏原バス停にさしかかりました。

バス停のある部分だけ行き違いができるように拡幅されています。
有効長は大変短く、せいぜい2台分程度か?*5
他にも行き違い可能なバス停は多数設置されていましたが、私が乗車したこの便および上り便は、行き違いはありませんでした。


専用道経由のバスは、概ね丹生川の右岸を経由しており、左岸には国道168号線が見えます。
地図を見ると、線形だけに限っていえば国道168号より専用道のほうが良さそうに見えます。
さすがは鉄道を通す事を念頭において設計されただけあって直線と緩いカーブの繰り返しとなっています。
国道は川の流れをある程度トレースしている模様で専用道よりはカーブが多い。
これだけで見れば専用道のほうが条件は良さげですが、ちっとも条件は良くないのです。


・道路は単線分の幅しかなく、結構狭隘。路側帯などもなく、ハンドル操作を誤ったら道から転げ落ちてしまいそう。
・切り通しなどでは、道の両側から草木が道路上をかすめる辺りまで生い茂っています。
・路面の補修があまりなされていない様子で、ひび割れなど多し。
・トンネル内はもっと状態が悪く凸凹がひどい。あまりのひどさに新たにアスファルトを敷き直して補修されている部分も多数あり。


このような悪条件から、バスの速度は時速40km程度までしか上がらず、専用であるが故に逆にハンデを背負わされているようにも感じました。
近頃は山間部の道路でも拡幅や曲線緩和、トンネルでショートカットなどの改良が実施されていますから、国道168号のほうがおそらく走行しやすいでしょう。

↑専用道大日川バス停付近で立体交差する専用道と国道。どう見ても国道のほうが走りやすそう。


城戸に着きました。721頃着。
ここまで、乗降は一切なく、一般道走行部の赤信号での停車以外はほぼノンストップなのにほぼ定刻でした。
乗降がないからゆっくり走っていたのか、乗降があったら遅着となるのか…。謎です。

広い構内です。
もしも鉄道が完成していたら、おそらく交換可能な配線としていたことでしょう。*6

バス停の表示は、国鉄・JR時代は「城戸駅」だったそうです。
あくまでも「鉄道」にこだわっていたのですね。


城戸にたった2−3分の滞在で、専用道城戸724発車。
これを逃すと、専用道のバスは明日の朝までやって来ません。
当地から川の対岸へ渡ると、国道168号の城戸バス停がありますが、932発なので2時間も待たなければいけません。
それもまた一興*7かと思いますが、あっさり折り返しました。


折り返しのバスは貸切とはなりませんでした。
向加名生バス停から、おばあさんが2名乗車してきました。
平日の高校生通学のためのバス路線だと思っていたので、まさかの乗車に驚きました。*8
帰りの専用道経由のバスは翌朝までありませんが、きっと帰路は国道168号経由のバスに乗車して、向加名生バス停の川の対岸にある国道168号上の大白川バス停を利用するのでしょう。


他、面白かった点として、専用道と一般道の交差点には古レールを組み合わせて専用道に進入しにくくする柵を設定されていました。*9

↑この画像ではわかりにいですが、カーブミラーの下付近とその反対側(右側)に設置。
古レールというのがいかにも鉄道らしいですね。


また専用道霊安寺バス停の北側にある一般道との交差点に、踏切の遮断機が、竿なしで本体だけ残っていました。
かつては使用されていたのでしょうか。
バスが交差点にさしかかると、黄色のパトライトが点灯回転している箇所もありました。


かなり興味深い体験の出来たこのバスは、定刻の754に五條駅バス停に到着しました。

かつてJRバス時代は、五条駅の駅舎左側にある空間*10にバスが発着していました。
いかにも鉄道系のバスらしいな、という様子でした。
はっきりと記憶に残っています。
奈良交通に移管されてからは、画像右側(タクシーのさらに右側、写真に写っていない部分)に乗り場が変更となりました。

五条駅1番線から柵越しにかつてのバス待機場がはっきりと見えます。
旅客は改札口を経由して歩いて行けますが、歩けない荷物や貨物はこの柵を取り払ってホーム上から直接自動車に積み下ろしをしていたのかもしれません。


今回は専用道バス路線の乗車について書きましたが、五新線の遺構といえば、五条市内や城戸−阪本間に残っています。
これらはバスが走る事なく放置されていますが、重要な遺構ですので、また後日訪問して見学してみたいと思っています。

*1:JRの駅名は五条で、自治体名やバス停名などは五條

*2:結局、国鉄の経営が火の車となり五新線建設は頓挫

*3:完成した路盤が城戸までだったため、阪本まで運転せず城戸止まりだったのにも関わらず「阪本線」の名称でした。

*4:五條バスセンター発、五條駅経由のため

*5:その昔は2台で続行運転までしていたそうです

*6:五条から城戸までは10km弱程度、交換できそうな敷地は見当たりませんでした。幹線としての機能を求めるなら、この間に少なくとももう1か所は交換可能駅を設けると考えられますから、輸送量はあまり期待されていなかったものと考えます。

*7:城戸から阪本までの完成した橋梁やトンネルが残っているはずなのですが、坂道だらけの山中で徒歩で回りきれるかどうか自信がなかったのです。

*8:このあと、一般道に入ってから五條病院前で1名乗車あり。最混雑区間は五條病院前→五條町の4名でした

*9:切り返しを繰り返せば進入できるとは思います。また、スクーターは堂々と進入しており、2台とすれ違いました。

*10:画像の左端、軽自動車が停まっている場所