湖東で鉄分補給その2 近江鉄道

前回の続きです。

昨年6月、今年6月に続いて三たび近江鉄道に乗車。
今回は貴生川駅からのアクセスです。

日曜日の11時頃とあって、降車客が多い模様。
特に高校生が多かったようです。
部活動でしょうか。


これから乗車するのは11時02分発の快速米原行き。
車両は近江鉄道の主力800系。

地方私鉄にしては珍しい事に快速列車が設定されています。
日野までは水口の市街地の中を通るだけあって利用がソコソコ見込めるようで、貴生川−日野間の区間列車も多数設定されています。

(↑水口にて交換)
我が快速も、水口エリアのニーズを無視できないからか、1駅のみ通過でほぼ各駅に停車。
日野を出ると八日市までは交換可能駅の桜川のみ停車で、快速らしく他は通過。
確かに日野−八日市間は人家が少ない田園地帯に線路が敷設されているだけあって、通過させても影響は少ないのでしょう。
列車の先頭から前をかぶりついてみていると、レールは細く、枕木は木、架線柱も木製と、実に貧弱。
あまり飛ばさず、せいぜいMAX60km/h程度。
儲からない区間だけあって、設備投資もあまりできないのでしょう。


八日市11:40着/11:41発。

八日市の中心駅だけあって、快速の旅客のほとんどが入れ替わります。
快速はこの先、彦根まで25分もノンストップ。
快速の名に恥じない走りっぷりです。
この区間の交換駅で上り列車*1は、ほとんどの駅で曲線側の線路に進入するので*2、通過とはいえどもかなり速度を落とすのが歯がゆいところです*3
ただ、八日市彦根間は旧中山道沿いに線路が敷設されており、人家もソコソコ多いエリアです。
この区間は、乗降が多く見込める駅だけでも停車させてもいいのではないかと思います。

(↑ノンストップのつもりが愛知川駅運転停車普通列車と交換。)
設備面では、この区間はそれなりに手入れがなされており、PC枕木、コンクリ架線柱などが設置されています。
それでもあまり速度は出さず60−70km/h程度。
架線への給電能力問題も関係あるのかどうか、速度を上げられないのかも知れません。


個人的な考えではありますが、地方ローカル線における快速列車の設定はあまりすべきではない、と考えています。
快速設定のメリットとしては…、
1.快速停車駅相互の旅客の利便性向上
2.加減速が少ないので動力費(電化ならば電力費、非電化ならば燃料費)が減る
3.速達化により車両運用の効率化
4.乗員の労務管理の効率化、など


デメリット
5.快速通過駅の旅客の乗車チャンスを減らしてしまう
6.乗車チャンスを維持するには快速の通過駅を救済する列車*4を設定せねばならないが、得てして地方ローカル鉄道は単線、交換可能駅も少ない状況で自由にダイヤを組みにくい。
7.単線でダイヤの自由度を高めようとすると、交換設備の増設必要。その結果設備投資が必要となり、その結果固定費が増大。*5



旅客を少しでも拾って日銭を稼がねばならない地方ローカル鉄道にとって、快速列車の設定はデメリットが大きい。
もちろん、この得失を計算した上で快速運行を実施しているのでしょうけど、メリットがどうにも少なそうな気がしないでもありません。
しかし、今後もこの快速列車が維持、さらに発展増発できるような状況になれば、と願わずにはいられません。


この後、米原まで行ったり戻ったりをしていました。
何をしていたのかというと、220形電車に乗車したかったのです。
220形というと、いまどきの電車では珍しくなった釣り掛け駆動の車両です。
路面電車ではない普通鉄道で、いまどき釣り掛け駆動の電車を常用しているのは、近江鉄道の他には近鉄三岐鉄道ナローゲージ用電車ぐらいとなりました。
このような天然記念物的車両が走っているのに、過去2階の乗車では対向列車としてお目にかかることはできても、あいにく乗車は叶わず、今回3度目の正直ということで、近江鉄道を行ったり来たりをしていました。


狙い目は、本線の貴生川−八日市間と多賀線
しかし前者では、800系としか出会えませんでした。
残るは後者ですが、高宮や彦根で見ていても800系ばかり。
ですが、彦根の電留線には、パンタを上げて扉を開けて待機しているのです。
この後、米原まで行って折り返して高宮まで来たら、1両単行の220形(226)にやっと出会えました。


待ち焦がれた釣り掛け電車は、高宮を多賀大社に向けて発車。
また、多賀大社では折り返して彦根行きに。
彦根ではさらに米原行きに乗換え、これも220形(225)でした。

加速時にモーターが発する重低音は釣り掛けサウンドそのものです。
また、速度が40−50km/h程度に上がってきてから加速を続ける時の音は、高音で大音量。
轟音と言うより「騒音」です。一体、何デシベルあるのでしょうか。
私が過去に体験した釣り掛け車はJR鶴見線クモハ12、JR小野田線本山支線クモハ42、近鉄・三岐のナローゲージ、そして路面電車
いずれもここまでスピードを出していません。
速度が出ている時のモーター音のすさまじさについて、噂には聞いていましたが、ここまで轟音だったとは驚きで、ある意味新鮮な体験となりました。
近江鉄道の60−70km/hでこのような轟音ならば、100km/hでの走行だと*6どんな音量なのでしょうか?


しかし、味のある釣り掛けサウンドがそろそろ聴けなくなるかも知れません。
この電車、ブラックフェイスの先頭部に白い車体と見た目こそ現代風なのですが、足回りが時代遅れの釣り掛け駆動です。*7
朝日新聞記事によると、そろそろ引退が考えられているようです。
その一文を下記に引用。

「がちゃこん」の由来を尋ねると、西武鉄道から譲り受けて改造したモハ220形などにあるという。中古の車体に別の車両の台車と駆動装置をつけたところ、ギアがきしむような音をたてるからだという。今後は音のしない新しい電車に順次、切り替えられる予定で、「がちゃこんが聞けなくなるとマニアは落胆するだろうが、乗り心地も大切」という。


釣り掛け音を堪能したあとは、米原からJRを京都・奈良・王寺と乗り継いで帰宅しました。

(↑王寺で乗り継いだ105系。釣り掛け駆動ではありませんが、この一派*8も、速度が上がってくると釣り掛け車に負けないぐらい轟音を出しますね)

*1:米原方面行き

*2:見た目は1線スルーの配線なれど、信号機が上下線とも双方向に進入できるように設置されていない。ゆえに直線側に進入したくてもできない

*3:尼子駅だけは1線スルーの直線側を通過できるように信号が設置されているので速度を落とさずに通過できます

*4:普通列車など

*5:地方ローカル鉄道というにはちょっと輸送量が大きすぎる路線ですが、JR奈良線やJR呉線(広島−広)は、単線なのに快速を頻発させています。いずれの路線も本来ならば複線化しなければならないぐらいの路線ですが、それが出来ないために駅間距離が短いのにも関わらずほとんどの駅に交換設備を設けて、ダイヤの自由度を高めています。

*6:例えばクモハ42が京阪神の急電として疾走していた時や、新京阪(現・阪急京都線)のP-6形が大山崎で特急つばめを追い抜いた時

*7:その割には、改造車だけあって空気バネ台車を装備

*8:103系105系などMT55モーターの車両