2階建新幹線 Max引退の記事

東北・上越新幹線にて車体の大きさから圧倒的な存在感を示しているMaxことE1系E4系が5年後を目途に引退との新聞記事が発表されました。

Maxでも第一陣のE1系といえば、全車2階建ての輸送力至上主義的な車両として1994年にデビューした車両です。

折しも、首都圏における新幹線通勤の需要が伸びていた当時…、
大宮〜東京間は東北新幹線だけでなく、上越新幹線も合流し、列車が輻輳する上に、東京駅の東北・上越新幹線ホームが1面2線しかなく、続々と押し寄せる乗客をさばく通勤用新幹線列車を増発したくても東京駅の能力不足によりそれができず、多くない通勤用新幹線列車にはイスにありつけない立客でかなり混雑していたそうですね。
そこで、少ない列車本数で最大の輸送力を設定すべく製造されたのがE1系でした。
その当時、東北新幹線の主力だった200系で16両編成を組成しても1200名程度の定員だったものが、E1系だと12両で1200名を超える定員を設定できた訳ですから、その輸送力の大きさは通勤輸送にはもってこいだったと思われます。
(どうせならE1系で16両を作ればもっと運べるじゃないか、と思うところですが、それを作らなかったところに、東北新幹線沿線の人口が東海道のそれよりも少ない事を物語っていますネ。)


能力の足りない乏しい設備に、いかに大量輸送をするか、日本の幹線鉄道輸送史においてつねに繰り広げられてきた重要命題が、E1系が登場する前後の東京駅でも繰り広げられていたのです。
しかし、能力不足を解消するべく、東京駅の線増工事が1997年に完成し、1面2線だったものが2面4線へ倍増することにより上記問題は一応の解決を見ました。


そのいっぽう、E1系は12両固定編成で、編成の自由度に欠く事からあまり使い勝手がよくなかったのでしょう。
後継車として、8両編成のE4系が1997年にデビューしました。

E4系を2編成連結すると1600名以上の定員、その半分の1編成だけでも800名も運ぶ事ができます。
沿線人口が多くない上に需要の波が大きい東北・上越ですから、輸送力に弾力性を持たせる事ができるE4系は、JRとしてはE1系より使いやすくなったでしょう。
連結相手をE4系でなく、400系とすることにより、奥羽本線山形方面への流動と、仙台への流動を一本のスジで共用・両立することもできるようになりました。
線増が果たせたとは言え、それでも各方面からの列車が集まってくる大宮−東京駅ですから、連結運転はJRとして相当に有難かったかのではないか。
Maxがその真価を最大に発揮するようになったのはE4系が登場してからだと思います。
(しかしそのいっぽう、E1系上越新幹線に転属したものの、どうにも輸送力過大な様子で持て余し気味のように見えます)


しかし、デビューしてから、Maxを取り巻く情勢が変わってきました。
少子高齢化による日本の人口の伸び悩み、都心回帰により、2階建という特殊な車両を作ってまで対応する必要が薄れてきたのでしょう、
いっぽう、新幹線の高速化が実施されるようになりました。
E1、E4系の最高は時速240km。
その後にデビューのE2系は時速275kmまで速度を上げる事ができます。
E5系はやぶさ」に至っては時速300kmはもちろんの事、時速320kmも視野に入れています。
こうなると、足の遅い列車は速い列車の邪魔になります。
東京−大宮間はともかく、E1系E4系に合わせた平行ダイヤを組むわけにもいきません。
そんな面からも、絶頂期の頃と比べ、使い勝手が少しづつ悪くなってきたのかもしれません。
このような背景もあり、Maxを諦める事になったのでしょう(諦めると言っても、引退までまだ数年ありますが)。

Maxは、設備の能力不足を車両面でカバーする、いかにも日本的な事情から産みだされた車両ですから、ある意味において同じく設備不足(車両基地)を車両の回転でカバーする宿命を負わされた583系と似ている一面があるのかもしれませんネ。
583系も在来線規格ではありますが、Maxと同様に大柄な車両ですし。