トンネル駅その2−1 湯檜曽駅(ループについて)

北陸本線の筒石から、直江津ほくほく線〜越後湯沢と経由して、上越線湯檜曽までやってきました。
湯檜曽といえば、峠越えのループ線の駅としても有名です。
いきなりトンネル駅の話題をする前に、当地にトンネル駅がなぜできたかという話題から。

上越線は開通当初に、勾配緩和のためにループ線を2か所設けています。
この2か所を体験するには「建設上の歴史的経緯」から上り列車でしか体験できませんので、今回のトンネル駅訪問の行程上きわめて好都合でした。
さて、土合駅を発車した列車ですが、列車の先頭で、運転台助手席側後背の小さな窓から先頭をのぞきこむと、左へ左へとカーブしながら勾配を下っているのがわかります。
しばらくすると、進行方向右側に視界が開け、そのはるか下には湯檜曽駅が見えています。
ここからまっすぐ降りていく訳にはいきませんから、ループ線の緩勾配で下っていきます。
すると列車はトンネルに入り、山の中も左カーブでしばらく下っていくと、トンネルを抜け視界が開け、川を短い鉄橋で渡ると、湯檜曽駅に着きました。
ホームに降り立つとホームが勾配になっているのがわかります。
ループを抜けたとは言え、平坦区間はまだまだ遠いようですね。
勾配ホームを新潟方の端まで歩いていきますと、山のはるか上に斜面にはりつくように敷設された線路が見えます。
なるほど、相当な高低差であることが実感できます。

さて湯檜曽駅
トンネル駅と言いながら山の木々に囲まれています。
実は上述の「建設上の歴史的経緯」から、上り線はトンネルではありません。
実は下り線だけトンネル内なのです。
上越線の峠越え区間は、まず1931年に、現上り線が単線で開通しました。
この当時の土木技術では、長いトンネルを掘るのは大変で、まずは山の斜面を上れるところまで上って、いよいよこれ以上は上れないところまで到達すると、トンネルを掘るという形で山に挑んできました。
このトンネルが清水トンネルです。
その後、輸送量増大のために当路線が複線化されました。
その際に、ループを活用した現在線に新線路を張り付けるような形での複線化をとらず、土木技術の発達で長いトンネルを掘ることが可能になったため、ループも作らずに現在線よりもはるかに低い標高で緩勾配の長いトンネルを掘って対応することになりました。
これが1967年に開通した新清水トンネルです。
これにより、峠越え区間の複線が達成され、ループ&清水トンネルの線路を上り線に、緩勾配の長いトンネルを下り線として使用することになりました。
実は、上越新幹線ではこの区間を、さらに低い標高でさらに長いトンネルを掘って対応しています。(→大清水トンネル
当該区間は土木技術が3段階で発展していった様子が伺える区間なのです。